レッスンレポート

ベトナム人技能実習生に日本語を教えて1年が経過。どうなった? 工夫ポイントとは。

早いもので、2022年4月で、ベトナム人技能実習生向けに出張日本語教室を実施するようになって、1年が経過しました。

当初は1回実施した直後、コロナの影響で1か月ほど訪問を控えることになりましたが、その後はときどき休みつつも毎週日曜日の午前中に授業を実施し続けることができました。

1年前と今、実習生たちはどう変わった?

「出張日本語教室は1年です! どうですか? 日本語を話せるようになりましたか?」

と聞いたところ

「いえ!まだまだです・・・」

と立派な謙遜が返ってきました(笑)

学習者は合計7名(現在は5名)で、N3に近い人から、みんなの日本語で勉強したことはあるけれど、実際話すとN5くらい? あやしい? というレベルまでと差がありました。

そんな学習者が集まって同じ授業をするということで、どうしたものかと随分考えました。学習背景も違うので、どこまで話せるかもわからない。

とりあえず自己紹介ワークをしてみて、どこまで話せるかをチェックするところからのスタートでした。

当初はスライドを見ても「え?」という顔をしたり、こちらの質問が理解できない場面もありましたが、1年経った現在は、会話の練習でボケるし、日常会話はほぼ成立している気がします。

中でもN先生と年齢が近いL君は、かなり成長した気がします。

当初は授業中に落書きをしている場面が多かったのですが、今はこちらの発話で気になる言葉があると、すぐスマホで調べて積極的に発言するようになりました。

我々も「彼に落書きをするスキを与えないようにしよう(笑) 」という密かなテーマを作りました。1つのテキストを延々続けるスタイルではなく、あの手この手と工夫を凝らした(迷走した?)成果かもしれません。

授業のあと寮でベトナム料理(手料理)のランチをごちそうしてくれたことがあったのですが、その際N先生と一緒によっぱらったことで、壁がなくなったのも大きい気がします。そのあたりからものすごく話すにようになった印象です。

1年間、授業で工夫したこと

最大のテーマは「飽きさせないこと」

最大のテーマは「飽きさせないこと」でした。

それを踏まえ、授業のたびに「**が弱そうだったね」「じゃあ次回**の強化会にしましょうか」「○○はあんまり興味なかったかな」「今XXの季節だし、ニュースで話題のことをやりましょうか」と相談して内容を決めていきました。

テキストとしては「つなぐにほんご」「ゲンバの日本語」「いろどり」を臨機応変に使いました。同じテキストが続くと、飽きてきている空気が生まれてくるのがわかるためです(苦笑)

そこにさらに季節ネタとしてYouTubeのニュースを見せたり、鳶の現場と重なるオヤカタ君の動画を見せたり、私がハマっているものというテーマで趣味を紹介したり、災害時のアナウンスやニュースを聞き取る際の重要キーワード、工事現場でよく見る看板に書かれている注意書きといったものを、自分でスマホを使って意味を調べさせたりなど、手を変え品を変えの1年だった気がします。途中で教えて欲しいこと(名詞)を聞いて、リクエストに答えた回もありました。

二人でやる授業の構成も、当初は語彙導入時間と会話練習というスタイルだったのが、最近では年配の私がトレンドを見ながら「生活の中ですぐに役立つ日本語」を紹介し、N先生がテキストを使って会話を練習するという役割になってきています。

テキストがない授業も多いのですが、こちらはベトナム語の用語集は作れません。ですので、読み方を教えて、その場で自分で調べる時間をとるようにしました。日本語の意味はできるだけやさしい日本語で伝えつつ、ベトナム語での意味があっているかは全体で確認します。調べている間もピアラーニングで相談OK。

それ以後、どう言っていいか分からない言葉がでてくると翻訳アプリを使ってその場でどんどん調べるようになり、結果、前述のL君は落書きをしなくなった気がします。未知の言葉の意味に多く触れるようになって、刺激になったのかもしれません。

毎回必ず最初に復習の時間を取る

そもそも学校と違って予習も復習もしないので、すぐ忘れてしまいます。

そこで、私の担当回ではもういいよ〜もういえるよ〜と言われるまで、冒頭何度も同じテーマで復習しました。

最初は今日の日付、今の時間、今の体調、その日の天気予報、前週の仕事は何をしたか、今日授業が終わったら何をするか、というのを10週以上はやった気がします。口に出して言わないと覚えないので、全員指しました。

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現場の看板に書かれた漢字にふりがなはついていないので、これもしつこくランダムに指して答えてもらいました。

最後のほうでは学習者同士で次の人と答えるべき看板の指定をするというチェーンドリルのようなスタイルでやっていました。

今では看板を見れば何の注意を促されているか分かるのではないかと思います。
(ときどき抜き打ちで復習します)

早口にならないよう、褒める、つっこむ、笑う

他には、授業中の発話にメリハリがつくように意識していました。

妻子を母国に残してきた人もいますし、みんな若い成人男性なので下ネタ風味の日本語のボケも見られます(笑)

そんなとき、おばちゃん(私)は容赦なく話に突っ込んでいき、笑いをとります。

そんなときは教科書的ではない会話をします。

質問に対してズバリ正解したとき初級者なら「おっ!そのとおり!すごー!」と言います。やや上級の人なら「さ〜〜すが!知ってるねぇ!」

すると他のメンバーも茶化し半分で「すごーーーい!wwwww」といいながらやんややんやと手を叩きます(笑)

事務所と寮が一体化している場所のため、朝、寝起きの状態で出てくることも多いので、場の温度が上がるようなアクションは大切なのです。

まとめ

気づけば手探りの完全カスタムメイドで、教案は一切ありませんでした。

テキストの課ごとに進むものでもなく、彼らのそのとき必要だと思われたものにフォーカスしていたので、違うメンツで同じ授業をやれと言われても、スライドはあっても再現が難しい。

これでいいのか!?

この辺りが今後のテーマになりそうです。

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