レッスンレポート

ベトナム人技能実習生向け日本語教室では教材として「つなぐにほんご」と「ゲンバの日本語」を使っています。

学習者の背景と会社のニーズ

現在私とN先生ふたりで担当しているベトナム人技能実習生向け日本語教室は、彼らが所属している会社の事務所を教室にして行っています。

完全にいち会社が自社の実習生向けに行っている日本語教室です。「出張日本語教室」という名前がついています。

学習者は7名で、上はJLPTのN3にチャレンジしたいと思っている人から、N5〜N4くらいまで、レベルに幅があります。日本語学習歴もバラバラです。

それでもふだん仕事で日本語を揉まれているせいか、日常的なやりとりに支障はなさそうです。それでもすべての表現をマスターできているわけではないですから、現場でのコミュニケーションに支障がでることもあるようで、そこをなんとかしたいという思いで依頼されました。

送り出し機関によっては、ほとんど話せない状態で来日してしまうケースもあるらしく、受け入れ側として困ることも多いそうです。

「つなぐにほんご」と「ゲンバの日本語」を買ってみた

今回の例では、技能的には「聞く」「話す」中心で、「読む」「書く」は意識しなくていいということでした。

教科書として「みんなの日本語」は持っていて、いちおうそれで独自に文法を勉強しているそうですが、コミュニケーションにフォーカスしたいので、「みんなの日本語」に沿った授業にはしたくない。レベル的には一番できない人にあわせてくれ、という要望もありました。

学校なら「みんなの日本語」の1課から順番にやっていけばいいと思うのですが、今回のケースは覚えている日本語もある中で、日常や仕事のコミュニケーションで使えるレベルまで会話力を引き上げることが目的ですね。

そういう背景があるので、N先生とどういう授業をしたらいいか相談しました。

テキストがまったくないと、毎回ネタ探しに追われてしまいますし、何よりプランが立てにくい。

本屋にいって手に入るテキストをあれこれ比較しながら、最終的に「つなぐにほんご」と「ゲンバの日本語」の2冊を購入しました。

「つなぐにほんご」を選んだ理由

つなぐにほんご」はヒューマンアカデミーがつくり、現在ヒューマンアカデミー日本語学校で採用されている教科書です。

「つなぐにほんご」 公式サイト

文法積み上げ型ではなく、場面会話中心で、Can-doのゴールが明確になっています。あらかじめメインと練習用の場面会話が4コマの絵付きで用意されていて、4ターンから5ターンのモデル会話もすでにあります。

ちゃんと教師用の手引きもありますし、嬉しいのはその課のスライドと練習で使う絵がすべてオンラインで入手できること! つまり、自分でモデル会話作ってその場面にあう著作権フリーのイラストを探してネットをさまよう必要がないんです。

文型練習もちゃんとありますが、メインではありませんね。こういう場面ではこういう文型を使って表現しますね。練習しましょう!くらいでしょうか。

文型導入の時間が重くない、というのも大きな特徴なんですね。

ポイント

  • 先生は教材の準備が楽。
  • その分どのように授業を展開するか質の部分に力を入れやすい。
  • 学習者は会話メインで学習できる。

これが理由で「つなぐにほんご」を使ってみることにしました。

実は私は文化庁委託の初任研修を高田馬場のヒューマンアカデミー日本語学校で受けていました。メイン講師の先生は他校の方もいらっしゃいましたが、基本的にヒューマンの先生方が見てくださいました。模擬授業では、担当がヒューマンアカデミー日本語学校の教務主任の先生だったりもしました(汗)。

自分が養成講座時代に「みんなの日本語」を使った教案を作っていたので、研修の模擬授業でも文型練習に時間を割いたのですが、先生からは「そこまで文型に時間をかけなくてもいいです」といわれて驚いた覚えがあります。

パターンプラクティスとか、代入練習とかもっとやったほうがいいんじゃないの!?

と思っていたので戸惑いましたが、ヒューマンアカデミーに通う中級のモデルスチューデントさんたちを見て考えを改めました。

模擬授業では、中級クラスの生徒さんがきていたんですが、「つなぐにほんご」で勉強してここまで話せるようになったんだ! と感動しました。これも「つなぐにほんご」の信頼感に繋がっています。

今回はすでにある程度「みんなの日本語」で学習しているという前提があること、人によって知っている表現に差があることから、ペアワークを中心に

  1. 「つなぐにほんご」で場面を見せて、まず自分たちで会話を考えてみる
  2. モデル会話を聞いて違いを認識する(気づき)
  3. モデル会話を確認したら、自分たちの生活にてらし、同じパターンで独自に会話を作って(適宜置き換えて)発表する

という流れにしています。モデル会話を何度も復唱して覚えるのではなくて、話者の名前も自分たちに置き換え、自分たちが行くところ、買いたいものを使って作ってみてもらっています。

養成講座時代に模擬授業を見ていて、練習Cなどのモデル会話を一語一句違わずひたすら覚えるって辛いな・・・と自分が思ってしまったのが理由なんですが、そのとき「自分が言いたいことだったらどうだろう? 」と思ったのがきっかけです。

会話できたらいいので、だいたい合ってればOK!ですので。

教室ほど広い場所ではないので場面の再現は難しいんですが、笑える会話が飛び出してきて楽しいです。

「ゲンバの日本語」を選んだ理由

ゲンバの日本語」はスリーエーネットワークの教科書ですが、これはズバリ、学習者さんたちが「とび職人」だから!

「ゲンバの日本語」公式サイト

ポイント

  • 現場で使いやすい会話の参考になる。
  • 「みんなの日本語」の何課のどんな文型が使われているかわかる。
  • 話題、場面、タスクの説明にベトナム語が添えられている。
  • 公式ページには授業で使える動画が公開されている。
  • 語彙一覧にベトナム語版がある。

授業で使うのはこれからなんですが、実際に音声を聞いたり動画を見たりしながら、知らないところを埋めていく形で進めてみようかなと考えています。

これらはあくまでも私の例なので、学習者さんのレベルや目的によって選択肢は異なってくると思います。

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